たぬき汁

雑記主にカクヨムで読んだ作品の備忘録的読書感想文を掲載予定

第一回読書感想文『羽川こりゅう 作品集』

kakuyomu.jp

作品紹介

作品集テーマ『今日は、涙も』(夢見屋「風見鶏」提供詞)
 1.『働かないライオン』(てきすとぽい投稿作)
 2.『絵のない画廊』(未公開作)
 3.『ちいさな ようせいさん』(未公開作)
 4.『娘からのプレゼント(問題編・解答編)』(Twitter上で公開。一部未公開)
 5.『アイズ’ルーム』(てきすとぽい投稿作)
 6.『僕が殺すのは僕を殺した僕の僕』(未公開作)
 7.『こころぐらす』(未公開作)
 8.『ふとうめいな よる』(真夜中の子ども文学賞・大賞受賞作)
 9.『てんごくと あな』(てきすとぽい投稿作)
 10.『ねじまきせかい』(書き下ろし)

 
 以上が概要頁から抜粋させて頂きました、収録作品一覧になりますデス

 童話的寓意的な短編作品を合わせて十篇詰め込んだ作品集デスね
 『アイズ’ルーム』、『僕が殺すのは僕を殺した僕の僕』の二篇以外は全てが童話的寓話的な語り口調で語られておりマス
 ですが、それは決して先述した二篇以外が子供向けであるということではありません
 もちろん童話的寓話的な作品集なので、メインターゲットとしては児童文学を読むくらいの年齢のいわゆるお子さんを想定しているかと思いマス。ですが、決してそれだけではない。むしろ、大人にこそこの作品の鋭敏さ、怜悧さを知ってほしい。そんな作品集でありマス

所感及び感想

 短編集なのであまり筋立てやあらすじを盛り込むと読んだ時の楽しみが薄れてしまうので、ここではネタバレにならない程度に納めさせていただきますデス

『働かないライオン』

 サバンナに暮らすライオンたちの群れの中に働かないライオンがいて、ある日――
 という導入から始まるお話デスね

 とても現代的、もっと言うと現代日本的な感性で綴られており、私のようなダメ人間が読むと心が痛くなりますが、それと同時に何か暖かい勇気のようなものもまた伝えてくれるのデス
 私たちは生きるようにしか生きられないデス。だけど、もしかしたら生き方くらいは、選べるのかもしれないデス。そしてつまりその逆も――、また選べるのかもしれないデスね
 私の好きなエピソードデス(いやはや、全てのエピソードが好きなエピソードだというのはこの際おいておいてくだサイ)

『絵のない画廊』

 ある美術館には不思議な白いキャンバスがあって――
 という導入から始まるお話デス

 『願い』というのにも色々な種類がありますデス。願望、哀願、懇願、悲願、念願、後は希うなんてのもありますかね
 願いの強さは人それぞれ、比べるべくもありませんデス。きっと誰もが自分の願いが一番強いってそう思っているのではないでしょうか?
 
 それではその純粋さならば、どうでしょう?
 『願い』とはつまり欲望デス。そこから欲を取り去って、それでも残る切実さとは、果たして一体何でございましょうか?
 あるいはそれよりももっともっと別の――
 恐らくですが、この作品には無限にも近い解釈があるのではないでしょうか、決して答えの出ない。だけれど必ず隣にいるそんな不確かさ
 果たして一体、『何を』問いかけられているのデスかね……?

『ちいさな ようせいさん』

 ちいさな ようせいさん と そのふしぎな せかいに まつわる おはなし デス
 
 とても短いお話デスので、あまり語ると確信に触れてしまいます。ので、私からからはほとんど何もお伝えできないデス
 ただ、あなたの中にはちゃんといますでしょうか? そうきっと本当ならば皆さま方、私も含めた皆さま方が知っているはずなのデス
 だけどきっと忘れてしまっている
 このお話を読んで、それを思い出していただければなと。きっと思い出していただけるに違いないと、そう思う所存デス

『娘からのプレゼント(問題編・解答編)』

 ある父親が娘からのプレゼントをもらいました、それは一体何でしょう?
 という出題形式でそれに対する解答がさらりとつけられた物語です

 こちら本当に短いので、さらりと読んでいただければなと思いますデス

『アイズ’ルーム』

 モニタ越しに映し出される『アイズ’ルーム』という謎の有料番組。それは――
 『アイズ’ルーム』という架空のテレビ番組を扱ったお話しデス
 
 上述したようにこの作品は全体の傾向とはミスマッチな、異色ともいえる作品デス。ですが、確かに根底には同じものが流れていますデス  冷たく、それでいてするりと心の内側へと入ってくる。鈍色の柔らかくそれでいて鋭い管のような、そんな一篇デス
 全篇を通して問い掛けられるのは、生きる必要性。“Am I a person that you need?”という一説
 
 圧倒的にエグ味があります、だけどそれは決して不快なものじゃない。人のエグ味と優しさとが、暖かさと冷たさとが奇妙に同居しているのデス。明確な答えが示されることはありませんが、だからこそ、ずぶりと心の奥深くまで容赦なく突き刺さってくる。そんな作品なのデス  
 このお話を読んで、あなたが得る答えはきっとどんなものだったとしても、それは正しいものになるのだと、そう思います。願わくばしっかりと悩んで頂ければなと、そう思いますデス

『僕が殺すのは僕を殺した僕の僕』

 僕と僕が織りなすタイムリープ――
 僕がある能力を手に入れ、僕もまたある能力を手に入れて……、というお話デスね
 
 こちらも『アイズ’ルーム』同様、いえそれ以上に毛色の違う作品になっています。ただやはり物語の骨格にあるものは他のお話と同一だと、そう思えますデス
 恐らくこの作品集の中で最も『重い』作品に仕上がっているかと思います
 象徴的なのは『世界』とそれから『化け物』辺りでしょうか? その情念はあまりにも深く、暗い
 読み口、解釈によってはあまりにもやるせなく、だというのになんとも晴れやかなピリオドになるのデス  
 結局のところ正しさなどは証明のしようもなく、けれどだからと言ってそれをないがしろにすることも出来ない。そんな不完全さ、不全さ、手落ち感。それでも世界は収束する
 
 正しさの海に溺れ、閉塞的な世界の中で、それでも私たちは生きている。きっと誰もがそうなんです、だからこそ、この物語は愛おしい

『こころぐらす』

 その名の示す通りの『こころめがね』を題材にしたお話しで
 『こころめがね』に映る人の心を題材にしたお話しデスね
 
 この おはなしは とくべつ つよく といかけて くるのです 
 それは あなたの こころ にかも しれませんし また もっとべつの なにか おおきな ものに かもしれません
 
 しっかりとあなたの中で、私の中でこの問いかけの答えをもって、それで少しは前に進みたい。そんなお話デス

『ふとうめいな よる』

 ゆうれいにされてしまった おとこのこ と かれをゆうれいには しない おおおとこの おはなし
 幽霊にされる、とは果たしていかなる状態であろうか、そしてそうされてしまった男の子は一体何を感じるのか
 
 やはり明瞭な説明はなく、ただそこには小さな窪みのような示唆が残されているばかり
 果たして一体……?
 ちいさな彼の視点で描かれるそれは分不相応に陰鬱で、だというのにとても鮮やかで優しい
 ハッとするような世界がそこには広がっていて、だからこそ心にじわりと沁み込んでくる

『てんごくと あな』

 美しい散文詩のような てんごく と それから こころのあな
 
 明確に用意された答えなどなく、だからすべては読む人の主観によってのみ成立する
 あなたはこのお話に一体何を映しますか? 
 もし良かったら私に教えてくださいませんデスかね?

『ねじまきせかい』

 世界とセカイ
 美しい記録映像のような、こことは違う、ねじまきせかい
 セカイと世界はつながっていて、私たちもまたつながっている
 
 読んでもらえれば根底にあるものが確かに伝わる、そう思うのデス

終わりに

 一篇ずつ感想をつけさせてもらいましたらえらく長くなった気がしますデス
 どのお話もとても短く、だからこそ高い完成度を誇っています
 お気軽に気になったお話から読んで頂ければな、と思いますデス
 
 それでは長々お付き合い頂けた方、ありがとうございました